腱板は肩の内側で、肩甲骨から上腕骨頭につく肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋という4つの筋腱からなり、肩を挙上する際に重要な役割をします。
大工、鉄工業などの力仕事や、挙上の動作を繰り返す人に多く発症します。また、スポーツ競技でも負傷することが多く、特にバレーボールや野球など、投球に近い動作をする競技、テニスやバトミントンなどのラケット競技などで、繰り返される腱板の収縮と上肢の挙上、回旋などの運動により圧迫や摩擦が起こり発症します。ラグビーやフットボールなどのコンタクト競技で肩部の強打や転倒などの外傷が原因となる場合もあります。このように筋腱が何らかの原因で損傷を生じたものを腱板損傷、断裂といいます。
腱板損傷は負荷のかかる肩関節のポジションにすれば、痛みやひっかかりを感じ、腱板の作用である機能
(肩関節の動きを制御する作用)が低下するため、関節周囲組織に二次的な損傷を誘発することがあります。腱板断裂の程度が重度の際は上肢が挙上不能で、自分自身で上肢が保持できないケースもあります。
したがって、現在の腱板損傷・断裂の程度がどういった状態か、認識する必要があります。損傷・断裂の程度は徒手検査で腱板の確認とMRI画像で損傷や断裂の程度を判別します。MRI関節造影であれば、軽微な損傷まで診断が可能です。このように腱板の損傷程度がどういった状態か、徒手検査や精密検査などにより正確な判断を要します。損傷の程度や関節内外の併発損傷の有無、現在おかれている生活環境、日常生活動作レベル、スポーツ種目、スポーツの活動レベルなどを考慮し保存療法で治療過程を進めるか、あるいは手術療法が適応なのか的確な判断が必要となります。
腱板損傷が軽微な場合は保存療法を選択します。アイスマッサージ・アイシング・湿布・電気治療(超音波・中周波)などで痛みを軽減させ、炎症が緩和すれば安定性を強化する筋力トレーニング(肩のインナーマッスル=棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)も並行しトレーニングを行い、筋力のサポートにより不安定性を補強します。腱板断裂が認められても必ず手術適応ではありません。手術適応となるケースはスポーツ活動への早期復帰を強く希望する場合や残存腱板の代償作用が認められないケース、複数腱に及ぶ断裂を認められるケースは手術選択を視野にいれます。
全くスポーツ活動を中止し手術が必要な状態か、スポーツ活動の制限と治療(スポーツリハビリ)でスポーツ復帰が可能な状態か、あるいは軽度にスポーツ活動が可能な状態か、徒手検査や精密検査などにより正確な判断を要します。的確な判断を怠ると日常生活動作にも支障をきたします。
当院では現在の症状を問診や徒手検査で確認し、画像診断(MRI)などの精密検査が必要か否かを判断し、必要な際は提携医療機関に画像診断を依頼し、スムーズに検査を施行出来る体制をとっております。したがって、腱板断裂の疑いがあればMRIやMRI関節造影にて、腱板断裂の程度を判断し、確定診断することをおすすめします。間違った判断や自己判断はいたずらに治療を長引かすことになりかねません。自己判断はせず、専門医の指示を守り、適切な治療・指導を受けましょう。
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