肉離れはスポーツ障害の中で関節捻挫についで多い障害であります。肉離れとは強い瞬発的な筋肉の収縮や、持久的な筋肉の収縮を繰り返すことによって、筋肉または筋膜に腫れや出血が起こり、場合によっては筋繊維の一部が部分断裂や完全断裂を起こした状態を肉離れといいます。損傷の程度によりスポーツ活動はもちろんのこと、日常生活動作さえも困難なことさえもあります。肉離れの好発部位はハムストリングス(大腿部後面の筋肉)が最も多く、ついで大腿四頭筋(大腿部前面の筋肉)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)なども多くみられます。発生時期としてはスポーツ種目により多少異なりますが、シーズン当初(4月がピーク)に発生率が比較的高く、次いでシーズン終了後(10月頃)にも高く、この時期は充分なアップやストレッチング、コンディショニングなどのケアーが不十分な場合に多くみられます。
治療は損傷の程度にかかわらず、RICE処置は大切です。(R安静・I冷却・C圧迫・E高挙)これらが適切に行われているかでリハビリの進行やスポーツ復帰までの期間に大きな影響が出ます。したがって、アイシングは痛みや腫れが軽減するまでは継続して行うようにしましょう。
ひと昔前のスポーツ医学と違い、現在のスポーツ医学ではキプス固定までの完全固定はほとんどしません。損傷程度や痛みが強度の場合はテーピングなどの圧迫固定の選択もありますが、あまり強度な固定や不必要な固定を長期に施行すればリハビリの進行やスポーツ復帰までの期間に大きな影響が出ます。現在のスポーツ医学では逆に受傷初期から積極的に早期治療(損傷部の血腫を除去する特殊な治療)を施行し、損傷の程度にもよりますが早期から筋力トレーニングも開始します。しかし、損傷の程度が強度の場合は一定の固定期間(テーピングや弾力包帯など)がまれに必要とする場合もあります。しかし、強度の固定(キプスなど)は避けます。一般には「肉離れ」とひとくくりにしていますが症状は様々です。
肉離れは瞬発系動作の多い競技や過度の練習あるいは短期間・短時間にハードなスポーツ活動をする事で頻発します。スポーツ指導はまずジャンプや瞬発系動作の制限や症状の程度によってはジャンプや瞬発系動作を中止し、練習前に充分なウォーミングアップとストレッチングを行うようにしましょう。
痛みを軽減させるのにアイスマッサージ・アイシング・湿布・ストレッチング・電気治療などが効果的です。軽症の際は練習時や試合時にテーピングにより痛みを軽減させ、スポーツ活動は可能です。中等傷も痛みの程度にもよりますが練習時や試合時にテーピングにより痛みを軽減させ、スポーツ活動が可能な症例もあります。スポーツ復帰の目安は関節の動きや筋力が健側・患側に大差なく正常な可動性とストレッチ痛が軽減した段階がスポーツ復帰の時期になります。期間の目安は軽症な場合は受傷後1〜2週間、中等傷では2〜3週間、重傷では3〜4週間頃から始めることができるでしょう。
現在の症状がスポーツ活動の制限期か中止期か、あるいは軽度にスポーツ基本動作が可能な時期か、的確な判断を要します。的確な判断を怠るとスポーツ活動の長期間制限を余儀なくされます。また、自己判断はいたずらに治療を長引かすことになりかねません。自己判断は避け、かならず専門医の指示を守り、適切な治療・指導を受けましょう。痛みが軽快後もふくらはぎのストレッチング・下腿の筋力トレーニング・アイシングは充分に行い、再発予防に努めましょう。
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