胸郭出口症候群は、鎖骨の下から脇の下に走行する腕神経叢(血管、神経の集合部)が圧迫され、手に痛みやしびれ、脱力などを生じる障害である。症状が重度な場合は、手指の腫れや手指運動が不能な場合もあります。スポーツでは、野球、テニス、バドミントン、バレーボールなど、肩の使用頻度が高い競技種目に多くみられ、この障害は血管や神経を圧迫する部位や原因によって、4つに大別されています。
頚肋症候群…第7頸椎から出ている横突起が通常よりも大きい形状や、第1肋骨が鎖骨の位置に近い形状をし、圧迫されるケース。(骨の奇形が原因により圧迫)
過外転症候群…小胸筋が発達している人に起こりやすく、腕を上げて過外転の動作をした際、小胸筋の緊張により圧迫されるケース。(小胸筋の発達が原因により圧迫)
斜角筋症候群…斜角筋は前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の3筋より構成、前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫されるケース。(斜角筋の発達や外傷が原因により圧迫)
肋鎖症候群…胸を張って肩を後下方へ下げる姿勢で、肋骨と鎖骨の間が狭くなり、圧迫されるケース。
これらの症状は、問診や徒手検査の施行で推定診断が可能です。両腕を肩の高さまで上げ、肘関節を90度曲げ、両手を他の人が持った状態で保持し、1分以内にしびれや痛みが感じた場合は過外転症候群が疑われます。同じように両腕を上げて手を握る動作や開く動作を繰り返し運動し、3分以内に症状が誘発すれば陽性と考えます。また、指で斜角筋三角部を最長で1分間圧迫し、押さえた箇所以外にしびれなどの症状が感じた場合は斜角筋症候群が疑われます。肩を後方に下げ、胸を張った状態で1分以内に症状が表れた場合は肋鎖症候群が疑われます。
筋肉の緊張が障害の原因である場合、筋肉をほぐすリハビリ・湿布・ストレッチングや電気治療などは痛みの軽減には効果的です。日常から充分なストレッチングと良い姿勢を保つように心がけましょう。
また、現在の症状がどういった状態か、認識する必要は大切です。全くスポーツ活動を中止し手術が必要な状態か、スポーツ活動の制限と治療(スポーツリハビリ)でスポーツ復帰が可能な状態か、あるいは軽度にスポーツ活動が可能な状態か、徒手検査や精密検査などにより正確な判断を要します。的確な判断を怠ると日常生活動作にも支障をきたします。レントゲン検査で頸椎・肋骨に変形状態やMRI撮影(症状誘発姿位)により確定診断が可能です。当院では現在の症状を問診や徒手検査で確認し、画像診断(X線、MRI)などの精密検査が必要か否かを判断し、必要な際は提携医療機関に画像診断を依頼し、スムーズに検査を施行出来る体制をとっております。間違った判断や自己判断はいたずらに治療を長引かすことになりかねません。 自己判断はせず、専門医の指示を守り、適切な治療・指導を受けましょう。
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